SSブログ

ギターのチューニングの話 - 音楽と数学 (2) [音楽一般]

純正律と平均律 (2) という記事で、とくに "歪ませたギター" で使われるチューニング について書きました。もう少し、深く考察してみたいと思います。
#すみません、音の周波数の数学的関係に興味のない方には難解で読みにくいと思われます。m( )m

今回は、5弦解放 の音(A音です) の周波数を 110 Hz としたときに、前の記事で紹介した こちらのページ(Yahoo! 知恵袋のノート) に書かれている ハーモニクス を使ったチューニングを行った場合に 各弦の 周波数 がどのようになるか、および、それらの間の関係を調べます。というか、このページでは "3弦の4F(フレット)と2弦の開放弦を同じ高さに調整" する代わりに "3弦・4Fのハーモニクスと2弦・5Fのハーモニクスが同じ音高になるよう調弦" という部分だけ説明されていますが、それ以外についてよく行われているのは、6弦の5フレットと5弦の7フレット、5弦の5フレットと4弦の7フレット、4弦の5フレットと3弦の7フレット、2弦の5フレットと1弦の7フレット のハーモニクスが同じ音程になるようにチューニングする、というやり方なのでその場合を検証してみます。

まず最初に (3弦と2弦以外の) 隣り合う弦の音程の差ですが、5フレット分、つまり半音の5個分です。フレットは通常 "平均律" に基づいて打たれていますので、解放弦と5フレットの音の周波数の比は 2^(5/12) で 約 1.335 倍の関係になります。このとき、実際に振動する弦の長さは(その逆数で) 約 0.749 倍、つまりおよそ 3/4 になります。 
(註:ここからわかるのは、"5フレットのハーモニクス" といっても実際は "5フレット近傍" であって5フレットの真上 ではないということです。いわゆる "5フレットのハーモニクス" は、解放弦の4倍の周波数で弦を振動させることなのですが、この場合、Wikipedia の倍音のページ右上の図の上から4番目の図で ● がついている部分が5フレット近傍に相当します。"7フレットのハーモニクス" も同じ図の上から3番目の ● の部分に触れて3倍の周波数で弦を振動させることになるのですが、平均律で打たれた7フレットは解放弦の 2^(7/12) ≒1.498 倍の音程で その逆数は 0.6674 となり 1/3 = 0.66666..... よりも大きいので、ハーモニクスを鳴らすポイントも 7フレットの真上 ではありません。)

一方、上記のように隣り合う弦の 低い方の5フレットと高い方の7フレット のハーモニクスが同音になるようにする、ということは低い方の弦の4倍音と 高い方の弦の 3倍音 が同音になるようにするということです。 これはつまり 高い方の解放弦の音を低い方の 3分の4倍 にするということですね。この関係は、純正律の 完全IV度 と一致します。(Wikipedia の音程のページ の 「周波数比と音程」 の項目 を参照ください)
さて、3弦と2弦は、3弦4フレットのハーモニクスと2弦5フレットのハーモニクスが同音になるように、ということでしたが、前述のとおり、5フレットのハーモニクスは解放弦の 4倍音ですが、4フレットを押さえた時の 音 はというと、解放弦の 1.25992 倍の音高になるように打たれていてこれを逆数にすると 0.794 (≒0.8 = 4/5 )なので、これもハーモニクスは4フレット近傍で 5倍音 をならす(Wikipedia の図の上から5番目) ということになります。その結果、3弦と2弦の解放弦の音程の関係は 5/4 すなわち "長3度" になります。(これについても Wikipedia の音程のページ の 「周波数比と音程」 の項目 を参照ください)
[訂正(8/11) :もともと Wikipedia の倍音のページの 「各倍音と倍音列」の表を参照、としていましたが見当違いでしたので 参照先を 「音程」のページに修正しました。 (「倍音」 のページでは完全IV度は述べられていませんでした m( )m)]

ということで、ここまでの結果を整理しましょう。今回考察している方法でハーモニクスだけを使ってチューニングをした場合、ギターの各弦の音高の関係は次のようになります。
6弦 = 5弦 × 3/4
5弦 = 6弦 × 4/3 (= 110 Hz)
4弦 = 5弦 × 4/3 = 6弦の 16/9 倍
3弦 = 4弦 × 4/3 = 5弦の 16/9 倍 = 6弦の 64/27 倍
2弦 = 3弦 × 5/4 = 4弦の 5/3 倍 = 5弦の 20/9 倍 = 6弦の 80/27 倍
1弦 = 2弦 × 4/3 = 3弦の 5/3 倍 = 4弦の 20/9 倍 = 5弦の 80/27 倍 = 6弦の 320/81

5弦を A = 110 Hz としたときの それぞれの弦の周波数は以下のようになります。(参考として平均律の場合の周波数を [ ] で囲って右側に書きました)

6弦(E) : 82.5 Hz [82.41 Hz]
5弦(A) : 110 Hz [110 Hz]
4弦(D) : 146.67 Hz [146.83 Hz]
3弦(G) ; 195.56 Hz [195.00 Hz]
2弦(B) : 244.44 Hz [246.91 Hz]
1弦(E) : 325.93 Hz [329.63 Hz]  (参考: 6弦と1弦は2オクターブなので 82.5 × 4 = 330 Hz)

あぁぁ、、、このチューニング法では6弦と1弦の関係は too bad になっちゃいますね。実際には 1弦は 6弦の 5フレットのハーモニクス (4倍音=2オクターブ上) に合わせたりしますよね… (^ ^;; このチューニング法では、ある特定のキーの "純正律" になるわけではなくて、少なくとも隣り合う2本の弦について低い方の弦と高い方の弦の関係が "純正律" の音程になる、ということであって、ま、つまるところ万能のチューニングというものは存在しない、ということなんですかね。(なので厳密には曲のキーごとにチューニングを変えないといけない、というわけで。。。)

と、いうところで、今回の 考察 はひとまずここまでとしたいと思います。続きはまたいつか [わーい(嬉しい顔)]

# ところで個人的には 5弦の解放弦の音程が 110 Hz (440 Hz から2オクターブも下) というのは意外だったのですが、たしかに5弦5フレットのハーモニクスと 440 Hz の音叉の音程が同じなので、そうなりますね。。。


nice!(17)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 17

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。